
MITライセンスは、MIT(マサチューセッツ工科大学)が作成した、非常にシンプルで扱いやすいオープンソースソフトウェアライセンスです。
商用利用を含む、利用者に多くの自由を与えることから、多くのプロジェクトや企業で採用されています。ただし、著作権表示の保持や免責事項の確認など、遵守すべき条件があります。
この記事では、MITライセンスの基本から商用利用時の注意点、そして最新の動向まで詳しく解説します。
2025.4.06 追加と変更点
- MITライセンスのメリットとデメリット一覧表を追加
- MITライセンスとApache License 2.0、GPL、BSDライセンスの比較表を追加
- ライセンス違反としての法的リスク(訴訟の可能性)を追加
MITライセンスの商用利用
商用利用の自由と条件
MITライセンスの特徴は、商用利用が完全に自由である点です。ソフトウェアの使用、改変、再配布、販売が可能で、特別な手続きや制限はありません。ただし、以下の条件を守る必要があります:
- 著作権表示とライセンス条文を保持する。
- 利用は自己責任で行う。ライセンス条文には「現状のまま(AS IS)」で提供されることが記載されています。
最新の商用利用におけるトレンド
- SaaS(サービスとしてのソフトウェア)への適用:クラウドサービスが増える中で、バックエンドツールとしてMITライセンスを利用するケースが増加しています。
- モバイルアプリへの組み込み:MITライセンスのライブラリを利用してアプリを効率的に開発し、商用展開する例が一般化しています。
MITライセンスの商用利用についてのQ&A
【Q1】MITライセンスで商用利用が可能な理由は?
MITライセンスは、使用者に最大限の自由を与えることを目的としています。そのため、商用利用を制限する規定がありません。
【Q2】商用利用時に特に気を付けるべき点は?
商用利用では、特許や著作権の問題が特に重要です。利用するソフトウェアが第三者の知的財産権を侵害していないか確認しましょう。
【Q3】商用利用で得た利益の一部を開発者に支払う必要はありますか?
MITライセンスには利益分配の義務はありません。ただし、オープンソースプロジェクトを支援する観点から、寄付や協力を行うことが推奨されます。
MIT ライセンスの内容
MITライセンスは、以下の条件を簡潔に規定しています:
- 自由な利用:使用、改変、再配布、販売が可能。
- 免責事項:ソフトウェア利用に伴う損害に対する責任を負わない。
- 著作権表示:オリジナルの著作権表示とライセンス条文を保持する必要がある。
詳細な条文の詳細はMITライセンスの原文を参照してください。
具体的には、以下のように表現されます。
許可は、以下の条件を満たす限りにおいて、無料で繰り返し使用、コピー、変更、マージ、公開、配布、サブライセンス、および/または販売することができます。
上記の著作権表示および本許諾表示を、ソフトウェアのすべてのコピーまたは重要な部分に含めること。
本ソフトウェアは、明示黙示を問わず、商業利用、特定の目的への適合性、および非侵害性に関する暗黙の保証を含め、いかなる種類の保証も提供しません。
著作権者または本ソフトウェアの使用に関与した人物は、いかなる場合も、契約、不法行為またはその他の行為に基づき、ソフトウェアに起因または関連し、またはソフトウェアの使用またはその他の取引に関連して生じた契約外の損害について責任を負うことはありません。
このように、MITライセンスは非常に簡潔な文言で記述されており、自由度が高く、商用利用も自由に許可されるため、多くのオープンソースプロジェクトで採用されています。
オープンソースライセンスの日本語参考訳
https://licenses.opensource.jp/
MITライセンスの利用規約 原文
https://opensource.org/license/mit/
MITライセンスのメリットとデメリット一覧表
以下にMITライセンスのメリット・デメリットを一覧形式でわかりやすくまとめます。
項目 | 内容・理由 | 備考 |
---|---|---|
メリット① 自由度が非常に高い |
使用、改変、再配布、販売に関して特別な制限がなく自由にできる。 | 商用利用に最適 |
メリット② シンプルで制限が少ない |
条文が簡潔で理解しやすく、開発者が手軽に採用できる。 | 法務面での確認が容易 |
メリット③ 再配布が容易 |
派生物に対するライセンスの制約がほとんどなく、自由な再配布が可能。 | OSSの促進につながる |
デメリット① 免責条項により責任は利用者側 |
ソフトウェアに不具合が生じても、開発者は責任を負わず、利用者側が全て自己責任で対処する必要がある。 | 商用利用時は注意が必要 |
デメリット② 特許に関する規定がない |
特許権に関して明確な規定がなく、特許侵害のリスクが排除されない。 | Apache License 2.0との大きな違い |
MITライセンスの著作権表示
必要な情報
MITライセンスにおいては、著作権表示が必要です。著作権表示には以下の情報が含まれます。
- ソフトウェアの著作権者の名前
- ソフトウェアの配布元(オリジナルの配布元または派生物の配布元)
- ソフトウェアのライセンスの年号
具体的には、以下のように表記されます。
Released under the MIT license

なお、[著作権者の名前]と[年]は実際の著作権者の名前と著作権年度に置き換えて表記します。また、ソフトウェアの配布元には、必要に応じて自身の名前や連絡先情報を追記することができます。
MIT ライセンス 改変について
MIT Licenseでライセンスされたソフトウェアを改変して再配布する場合には、以下の2つの条件を満たす必要があります。
オリジナルの著作権表示を保持すること
改変されたソフトウェアを再配布する場合には、オリジナルの著作権表示を保持する必要があります。具体的には、以下のように記述することが一般的です。
This software is a modified version of the original software licensed under the MIT License. Original copyright (c) [年号] [オリジナルの著作権者の名前]. All rights reserved.
[ライセンス条項]
改変した部分について明示すること
改変されたソフトウェアに新しい機能や修正が加えられた場合には、その部分について明示する必要があります。具体的には、以下のように記述することが一般的です。
This software includes modifications made by [改変者の名前] to the original software licensed under the MIT License. Modified portions of this software are [改変内容の説明].
[ライセンス条項]
ライセンス違反としての法的リスク(訴訟の可能性)
MITライセンスは、著作権表示やライセンス条文を記載することを利用条件としています。そのため、これを怠ることはライセンス違反に当たります。
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著作権者からの訴訟リスク
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著作権表示の削除やライセンス表示の省略は、著作権者から著作権侵害として訴えられる可能性があります。
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実際に違反が認定されれば、差止請求、損害賠償請求が認められる可能性もあります。
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差止請求と損害賠償請求
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著作権侵害の場合、該当するソフトウェアの利用停止や公開停止を求められる可能性があります。
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特に商用の場合は、経済的損失(販売停止による機会損失、評判低下、訴訟対応費用)などの影響も大きくなる可能性があります。
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企業・プロジェクトの信頼性低下
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MITライセンスの遵守は、オープンソースコミュニティにおけるマナーや信頼性の指標とされています。違反が発覚すると、
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オープンソースコミュニティや開発者コミュニティでの評判が悪化します。
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技術者の採用やコラボレーションにも悪影響を与え、特にIT業界では企業ブランドの損失につながる可能性があります。
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他のOSSプロジェクトからの排除や利用制限
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MITライセンス違反が発覚すると、他のOSSプロジェクトやライブラリの開発者から警戒され、今後の利用が難しくなったり、協力を得られなくなったりするリスクがあります。
-
結果的に、製品開発やプロジェクトの推進に大きな支障をきたすことになります。
リスクを回避するためには
- ソフトウェアに必ず著作権表示とMITライセンスの条文を明記する。
- 定期的に利用しているOSSのライセンス状況を確認し、コンプライアンス体制を構築する。
- OSSのライセンス表示について組織内で徹底した管理を行い、コンプライアンス違反を未然に防ぐ。
上記のような体制を整えることが非常に重要となります。
商用利用可能なオープンソースライセンスの比較
商用利用が可能なオープンソースライセンスには様々な種類がありますが、ここでは代表的なものを取り上げ、MITライセンスとの比較をしてみました。
ライセンス | 商用利用 | 特許関連規定 | 著作権表示義務 | 派生物への条件 |
---|---|---|---|---|
MIT | 〇 | × | 〇 | 条件なし |
Apache 2.0 | 〇 | 〇 | 〇 | 条件なし |
GPL | △(条件付) | × | 〇 | GPL適用 |
BSD | 〇 | × | 〇(簡易化可能) | 条件なし |
※MITライセンスとApache License 2.0、GPL、BSDライセンスの比較
MITライセンスとApache License 2.0の比較
MITライセンスとApache License 2.0は、商用利用が可能なオープンソースライセンスの中でもよく使われるものの一つです。
MITライセンスは簡潔な文面で有名であり、商用利用に制限がないことから、多くの企業が採用しています。
一方で、Apache License 2.0は、特に大規模なプロジェクトに向いており、関連する特許権の問題についても考慮されています。
MITライセンスとGPLの比較
MITライセンスとGPLは、両方とも商用利用が可能なオープンソースライセンスですが、その規定には大きな違いがあります。
MITライセンスは、商用利用に制限がなく、派生物にも自由度が高いため、商用利用に適しています。
一方で、GPLは商用利用が可能な一方で、派生物をGPLライセンスで公開することが要求されるため、商用利用にはあまり向いていないといえます。
MITライセンスとBSDライセンスの比較
MITライセンスとBSDライセンスは、商用利用が可能なオープンソースライセンスの中でも古くからあるもので、どちらも商用利用に制限がないため、企業によく利用されています。
MITライセンスとの違いは、BSDライセンスがクレジット表示が必要であるという点です。ただし、この表示を省略することができる場合もあります。
以上のように、商用利用が可能なオープンソースライセンスには様々な種類があり、それぞれ利用目的や条件が異なります。
適切なライセンスを選択することが、ソフトウェア開発において重要な課題の一つであることは間違いありません。
MITライセンスのまとめ あとがき

MITライセンスは、商用利用も可能なオープンソースソフトウェアライセンスの一つです。今回は、MITライセンスの基本的な概要や主な特徴、商用利用についての注意点や他の商用利用できるOSSとの比較などについて解説しました。
最新の動向として、商用利用がさらに広がる中、特許リスク軽減のための取り組みが進んでいます。
参考資料:
この記事が、MITライセンスを安心して活用するための手助けとなれば幸いです!